土地購入前に確認!軟弱地盤ならやめた方がいい?地盤改良工事も解説

「土地購入を考えているけれど地盤が弱い地域なのか心配…」
「軟弱地盤ならやめた方がいいの?地盤改良費用もどの程度なのか分からない」
土地購入で直面する最大の壁は「地盤が弱いならやめた方がいいのか」という不安です。自宅建築後に不同沈下が起きれば、補修費と資産価値低下は計り知れません。本記事では、専門家視点で軟弱地盤の見抜き方、やめた方がいい判断基準、地盤改良の工法と費用、ローン・保険への影響までをステップ・バイ・ステップで解説。ハザードマップの活用法や価格交渉テクも掲載し、5分でリスクを把握できるチェックリスト付き。さらに、実例写真と図解で地盤調査結果の読み方をわかりやすく示すので、専門知識ゼロでも要点を理解できます。読むだけで安全・安心なマイホームへの第一歩が踏み出せます。
目次
弱い地盤とは何か?基礎知識と見抜き方
土地購入で地盤が弱いとわかった瞬間に「購入をやめた方がいいのか」と悩む方が多いですが、まずは“弱い地盤”の定義を理解しましょう。弱い地盤とは、建物の荷重を長期的に支え切れない土質・地層を指し、粘性土や盛土、旧河川跡など含水比が概ね50%以上の層が厚く分布しているのが特徴です。支持層が浅く存在しない場合、建物完成後に不同沈下や地震による液状化が起こりやすくなり、補修費用と資産価値下落という二次被害へと連鎖します。
POINT
支持層とは?—礫層・固結砂層・岩盤層など、建物荷重を安全に伝達できる硬質地層のことです。
軟弱地盤の判別ポイント:粘土質・盛土・旧河川跡
軟弱地盤の典型は、次の三つです。
- 粘土質
手のひら大に採土し丸めるテストを行い、形が崩れずヌルヌル感が残るなら含水比が高い粘性土。粘土鉱物が水を保持するため荷重に弱く、長期圧密沈下が起きやすい点がリスクです。
- 盛土宅地
隣地より不自然に高い、ブロック塀に逆L字クラックがある、敷地周囲に擁壁が多い—これらは造成時の盛土を示唆します。盛土は転圧不足だと空隙が残り、雨水の浸透で支持力が低下します。
- 旧河川跡・田んぼ跡
地名に「沼」「潟」「新田」が含まれる地区は、かつての低湿地や田んぼを宅地化した可能性が高く、砂質細粒分が多い層+地下水位が高いダブルリスク。液状化に直結するため注意が必要です。
POINT
地盤判別は「地表観察 × 古地形図 × 地名由来」の三点セットで確認すると精度が上がります。
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)の読み解き方
建物建築前に必須となるのがスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)による地盤調査です。
※スウェーデン式サウンディング試験の名称は、2020年10月よりスクリューウエイト貫入試験に変更
ロッドに最大1kN(約100kgf)まで段階的に荷重をかけ、25 cm沈むのに必要な半回転数から換算N値を求めます。
換算N値 |
判定 |
推奨対策 |
0〜2 |
非常に軟弱 |
鋼管杭・深層混合処理 |
3〜5 |
軟弱 |
柱状改良+ベタ基礎 |
6〜10 |
中程度 |
表層改良+布基礎 |
11 以上 |
良好 |
通常基礎も可 |
読み解きのコツ
- 柱状図を確認
N値3未満が連続している深度をチェックし、支持層までの距離を把握します。
- 地下水位を確認
GL(地盤面)直下1―2mに水位がある場合、セメント系固化材の水和反応が阻害され改良効果が下がる恐れがあります。
- 硬質層の不連続に注意
硬質層がパッチ状に現れる場合、杭先端の支持力が読みにくく工法選定が難航します。
SWS 試験の調査費用は全国平均で5万〜8万円ですが、首都圏など都市部では6万〜10万円、地方では4万〜6万円と地域差があります。土地購入申込後の融資内定前に実施すれば、キャンセルリスクを最小限に抑えつつ地盤の真実を把握できます。
ハザードマップ × 地盤サポートマップで“リスク地帯”を一発特定
国土地理院「重ねるハザードマップ」を使うと、洪水・高潮・津波・土砂災害だけでなく「土地の成り立ち」レイヤーで旧河川跡や盛土地帯を視覚的に把握できます。住所検索後に液状化可能性分布をONにすれば、地盤が弱いエリアが色分けされるため、初めての方でも直感的に判断可能です。
一方、民間(ジャパンホームシールド株式会社)サービスの地盤サポートマップは、過去に実施された地盤調査・地盤改良工事の深度などのデータなどを分析して、地域ごとの地盤の強度、地震の揺れ具合、液状化の可能性などをサイト上で公開・閲覧できるようにしています。
地盤判定の目安
① ハザードマップで立地をマクロ判定 → ② 地盤サポートマップでミクロ判定 → ③ SWS試験でピンポイント評価 —— この3段階でリスクを最小化しましょう。
地盤が弱い土地を買うとどうなる?想定外コストと長期リスク
「土地価格が相場より10%安い」と聞くと魅力的に映ります。しかし地盤が弱い場合、その値引き額をはるかに超える“あとから請求書”が届くのが現実です。不動産売買・新築工事・資産運用の三つの視点で、安物買いの高リスクとなるケースを整理しました。
不同沈下・液状化による住宅被害と補修費用シミュレーション
① 不同沈下の発生メカニズム
- 軟弱粘性土や埋立地では建物荷重により圧密沈下が進行します。基礎が片寄って沈むと「ドアや窓が閉まらない」「床が傾く」などの初期症状が出現。
- 圧密速度は含水比と転圧度合いに比例し、竣工後3年以内に年間5〜10 mm程度の急沈下が進む事例が多く報告されています[※]。
※出典:一般社団法人住宅地盤品質協会『不同沈下に関する統計資料 2024』
② 液状化しやすい地域の特徴
- 旧河川跡・砂丘地・埋立地など 細粒分15 %以下・地下水位GL2 m以内の砂質土は、地震時に地下水と共振しやすい危険土壌です。
- 2024年元旦地震(能登半島地震)においても多くの液状化が発生していますが、埋⽴地(海岸部)、砂丘/砂州・砂礫州、⼲拓地および三⾓州・海岸低地の5つの微地形区分で液状化の約75%が発⽣している。[※]。
※出典:国立研究開発法人 防災科学技術研究所『令和6年能登半島地震液状化被害の分布と特徴』
③補修費用シミュレーション
被害レベル |
代表症状 |
主な補修工法 |
概算費用※ |
軽微 |
クラック幅 ≤1 mm、傾斜 ≤3/1,000 |
エポキシ樹脂充填 |
40〜60万円 |
中度 |
基礎傾斜 10/1,000、建具不良 |
鋼管杭圧入+ジャッキアップ |
180〜250万円 |
重度 |
傾斜 ≥30/1,000・構造亀裂 |
基礎下全面薬液注入+再沈下監視 |
500〜800万円 |
液状化 |
敷地沈下 ≥20 cm |
杭引き戻し+再杭打設 |
1,000〜1,500万円 |
※ 木造30坪2階建て/2025年首都圏平均。端数は複数施工会社の平均値。
プロの視点
表に示したのは“現状復旧”のみ。壊れた家財道具・外構復旧や仮住まい費を含めると、実負担は1.3〜1.5倍になることが一般的です。
私の実家(兵庫県芦屋市)も兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で大きく被害を受けました。
増築した1階平家部分が液状化現象で80cm程沈み込み、ジャッキアップして建物を元に戻し、基礎下全面に薬液注入して復旧させましたが、当時の費用で800万円ほどかかりました。
関西ではそれまで【台風は来るけど、地震は来ない】【地震は関東のモノ】という風潮がありましたので、父親も地震保険に加入しておらず、全額自己負担を強いられました。
資産価値と売却価格が落ちるメカニズム
見た目が整った住宅でも、弱い地盤という“目に見えない欠点”を抱えていると、市場評価は三つの段階で落ち込みます。
- 銀行評価の減額
買主が住宅ローンを申し込む際、金融機関は地盤調査報告書と補強工事の履歴を確認する場合があります。資料が不十分な物件は「安全性が実証できない」と判断され、担保評価を下げられる可能性があります。評価が圧縮されれば、買主は不足分を自己資金で賄う必要があり、購入を断念する確率が跳ね上がります。
- 販売期間の長期化と値下げ圧力
地盤が弱い地域の物件は、地域の地盤データを取集したり、地盤調査を先行させたりすることで商談が停滞することがあります。そうすると、ポータルサイトに長く掲載され「売れ残り=訳あり物件」というレッテルが貼られ、最終的に初期提示価格からの値引きを避けられません。
- 浸水や軟弱地盤によるエリア全体のイメージ悪化
大雨が降るとよく水に浸かる地域や地盤が緩いと言われている地域では、町名を検索した買主の目にネガティブな記事が並ぶことがあります。リスクを数値で把握できない買主は“安心料”としてさらなる割安感を要求するため、近隣相場まで引き下げられる悪循環が生まれます。
プロの視点
地盤リスクは〈担保評価の減点〉〈販売期間の長期化〉〈買主心理の不安〉という三方向からじわじわ効いてきます。購入判断では「今いくら得か」ではなく、10年後・20年後にいくらで売れるかを起点に試算し、地盤改良や保証に投資するか、潔く別の土地を探すかを見極めることが最も合理的です。
仲介における土地売買のリスクについて
公社・公団、土地区画整理組合などが分譲(保留地売却)する宅地においては、まれに地盤保証付または地盤調査済みというものがあります。これは買主様にとっては安心材料であり、購入の良い判断材料になります。
しかし、我々が日々おこなっている仲介の現場においては、地盤保証付または地盤調査済みという土地はほとんど存在しません。一般個人の売主様の場合、地盤を保証することはありませんし、地盤調査については買主様が事前に調査したいとの申し出があった時に協力をするということはあっても、売主様が自ら調査して情報を開示するということは基本的にありません。
ですので、対象物件の地盤について不動産売買契約書や重要事項説明書には、下記(※)文言が必ず記載されます。
対象不動産に建物を建築する際、建築を依頼する住宅メーカーから地盤・地耐力調査を要請されることがあり、その結果によっては地盤補強工事等が必要となる場合があります。地盤補強工事等については、建築する建物の構造、規模、重量及び依頼する住宅メーカーにより異なります。また、地盤補強工事等の費用は買主の負担となります。
これは、買主様に地耐力は地表から判断することは難しく、これを調べるには地盤調査を行い、その結果によっては、地盤補強工事が必要となるリスクを伝える内容です。また、購入後に建てる建物によって、その地盤改良方法が異なる事も示唆しています。つまり、一般住宅において同規模であれば、その重量は【木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造】となります。
木造の重量を1とすると、鉄骨造で2、鉄筋コンクリート造で4となり、鉄筋コンクリート造は木造の4倍ほどの重量となります。当然、建物が土地に載るということは、重ければ重いほど必要とされる応力は増えるわけですから、木造よりも鉄筋コンクリート造の方がより地耐力を必要とします。
ですので、契約書や重要事項説明書に上記文言(※)をいれて、買主様には十分にリスクを説明することとしています。
まとめ — 値引きより高くつく“地盤リスク”は事前調査で回避
地盤が弱い土地には「不同沈下 → 補修費」「資産価値低下 → 売却難航」「保険・ローン条件悪化 → 支払総額増」という三重苦が待ち構えます。短期的な値引き額より、長期負担を数値化した想定外コストの合計で判断することが肝要です。購入前に必ず地盤調査と費用シミュレーションを行い、“安さ”の裏に潜むリスクを可視化しましょう。
「やめた方がいい」と判断すべき具体的ケース
地盤リスクは「補強すれば問題なし」と楽観視できるほど単純ではありません。不動産のプロとして長年現場に立ってきた経験から断言できるのは、“買わないことが最善策” となる場面が確実に存在するということ。本章では、撤退判断が妥当となる代表例を三つに絞り、技術・法規・経済の三方向から掘り下げます。
N値3未満・ GL−10 mまで軟弱層が続く場合は要警戒
1)技術的リスク ─ 支持層が遠いほど費用は指数関数的に上昇
SWS試験の換算N値が3未満、かつ軟弱層が地盤面(GL)から10 mまで連続する場合、一般的な表層改良や柱状改良では安全率を確保できません。支持層が深いほどコストは急増し、例としては次のとおりです。
- 鋼管杭:設計長 12〜14 m・30本で350〜450 万円
- 深層混合処理:固化材増量で 1 m³単価が通常の2倍超
杭施工の騒音・振動対策(防音パネル・計測機材など)で+20〜30 万円が上乗せされる場合も多く、総額は短期間で変動します。
プロの視点
近年は鋼材・セメントの同時高騰で、見積書の有効期限が30日以内という業者が増えています。ローン審査や設計調整に時間がかかると、追加値上げで家計を直撃しかねません。
2)経済的リスク ─ 改良費を市場価格に転嫁できない
地盤改良に400 万円かけても、後々中古住宅として売却する場合、査定額へ満額上乗せされることはまずありません。中古戸建市場では「杭長10数m以上」は心理的マイナスとなり、安心より不安が増大することとなります。よって、改良費を売買価格に転嫁することは難しいと言わざるを得ないでしょう。また、建物を取り壊して建替える、または土地として売却する場合、解体費用に加えて、パイル抜き工事(地中に打ち込まれた杭を抜く工事)も必要となる場合があり、費用が増大します。
100 年に一度の浸水想定区域は赤信号
1)気候変動で“100年確率”が“30年確率”に短縮
国交省の最新シミュレーションでは、気候変動により 24時間雨量が1.2〜1.4倍へ増加すると予測。従来の「100年確率降雨」は 2050年頃には30年確率降雨相当にシフトすると報告されています。
愛知県にお住まいの方は覚えている方も多いと思いますが、平成12年9月11日から12日かけて起きた東海豪雨と平成20年8月26日から31日かけて起きた平成20年8月末豪雨。
私は両方とも経験していますが、この時【100年に一度の大雨】としきりに言われていましたが、東海豪雨から平成20年8月末豪雨まではたったの8年です。私のお客様の中にも東海豪雨のあと、浸水地域の土地を買い、次の大雨は100年後と思って、平成20年8月末豪雨で床上浸水をした方もいらっしゃいます。県の緊急治水工事や河川の改修などもその間にありましたが、自然には勝てなかった。こういう事実もありますので土地選びは慎重にすすめていただきたく思います。
参考記事⇒天災は…忘れた頃にやって来る
2)法的制約と追加コスト
浸水深1 m以上の区域で新築する場合、建築確認申請時に盛土または基礎嵩上げが必須です。盛土1 m・敷地120 ㎡ の目安は次のとおり。
項目 |
概算費用 |
掘削・残土処分 |
約45 万円 |
盛土材搬入 |
約60万円 |
転圧・敷均し |
約20 万円 |
合計 |
約125万円 |
擁壁高さが1.5 mを超える場合、RC擁壁新設で+150〜200万円。基礎嵩上げを選ぶと階段・スロープ追加で外構費が膨張し、バリアフリー性も低下します。
3)保険料上昇と資産価値下落の二重苦
水災リスクの最も高い地域と最も低い地域では、水災補償の料率加算で火災保険料が1.2倍に上昇。再販時は金融機関の担保評価が▲10 %減額される例もあり、購入コストを回収しづらくなります。
プロの視点
ハザードマップで「浸水深1m未満」なら対策次第で検討余地がありますが、それ以上の場合は将来的に再建築制限がかかる懸念があり、原則“撤退推奨”です。
土地購入を断念・検討中止のラインを引く
土地購入を断念・検討中止のラインを引く土地を購入する決め手となるのは、実家に近い、職場に近い、日当たりが良い、
ロケーションが良いなど様々ですが、もし今購入しようと思っている物件があるならば、是非この章で紹介したネガティブな項目が該当しないかチェックしてください。そして、プラスの項目とマイナスの項目を天秤に掛けて、撤退ラインをあらかじめ引いて、購入を再検討していただきたく思います。
総括 ─ “撤退ライン”を先に決めることが最大のリスクヘッジ
- N値3未満が10 m連続 → 杭打ちコストが試算額の倍になる恐れあり。
- 浸水深1 m以上 → 保険料増+再販価値減で恒常的な負担を背負う。
- 浸水地域は基本的に海抜が低い、または河川流域なので地盤も弱いことが多い
地盤リスクは“見えない負債”。対策を講じても費用対効果が合わないことは多々あります。撤退基準を事前に明確化し、基準を超えたら即撤退——これこそが将来の資産と家族の安心を守る、現実的かつ最短の戦略です。
プロが伝授 ― 後悔しない土地選び5ステップ
土地の購入では「価格」「立地」「資産価値」ばかりに目が向きがちですが、地盤の安全性を軽視すると、あとから多額の出費に追い込まれます。ここでは、不動産の現場で培ったノウハウを基に、失敗を防ぐ5つの手順を順番に解説します。すべて実践しても、おおよそ1か月で完了できる内容です。
STEP 1:書面と現地で候補地をふるいにかける
まずは机上調査と現地確認の2段構えで、危険な土地を早期に除外します。
机上調査では、国土地理院が公開する「重ねるハザードマップ」に住所を入力し、洪水・土砂・液状化の3つのリスクを色分けで確認します。真っ赤に染まったエリアは、値段が安くても迷わず候補から外しましょう。さらに、古い地形図や地名を調べ、「沼」「潟」「新田」といった水辺を示す漢字が残る場所は、昔から軟弱地盤だった可能性が高いと判断できます。
現地確認は雨上がりがベストです。24時間たっても水たまりが引かない、ブロック塀にL字形のひびが入っている、マンホールが道路面より高い・低い──この3つのサインがそろえば要注意。ここまでで、候補地のおよそ30%は「買わない」判定になるのが一般的です。
STEP 2:第三者に地盤をダブルチェックしてもらう
ハザードマップをクリアしても、簡易調査1回で安心するのは危険です。必ず第三者の調査会社に追加でボーリングを1本依頼しましょう。深さ10m・費用15~20万円で、土質・N値・地下水位を詳しく把握できます。
一次調査と追加調査の柱状図を重ねれば、支持層までの距離や軟弱層の厚さが一目で分かります。もし食い違いがあれば工法や費用が変わります。たとえば、一次調査でN値2.5、追加調査でN値1.2と判明したケースでは、柱状改良から鋼管杭へ変更となり、追加費用40万円が必要になりました。早めのダブルチェックは「想定外の出費」を未然に防ぐ保険と考えてください。
STEP 3:リスクを金額に置き換えて値引きを交渉する
集めたデータを武器に、リスクを具体的な金額として売主に提示します。例として、
- 地盤改良費150万円
- 金利増70万円(10年間の総負担)
- 将来の売却価格減80万円
合計300万円の損失が見込まれるとします。ここからは売主様との交渉ですが、地盤が悪いのは売主様のせいではありませんので、例えば、300万円のうち半分をもっていただけないか?と現実的な線で交渉をしてみる方が良いでしょう。
そして、改良費の見積書、調査会社のコメント、リスクの試算シートを1つの資料にまとめて提出すれば、感情ではなく数字の話として交渉が進みやすくなります。
STEP 4:改良費込みで返済計画を練る
交渉がまとまったら、「その家計で本当に払えるか」を冷静に確認します。
改良費を現金で払えば金利は低く抑えられますが、手元資金が減ります。逆に改良費をローンに含めると借入額が増え、金利が上がる銀行もあります。
比較例(借入 3,000 万円・ 35 年返済)
- 金利 0.50%:月々77,875円、総利息 約270万円
- 金利 0.60%(改良費 150 万円を上乗せ):月々83,169円、総利息 約493万円
35 年で223万円の差が生まれます。数字を家族で共有し、「無理なく払えるか」を話し合いましょう。
STEP 5:最後に“やめる勇気”を持てるかを確認
ここで「買わない」選択肢を残すことが、将来のリスクヘッジになります。私は次の3つの条件に1つでも該当したら、撤退を強く勧めています。
- 改良費が土地価格の10%を超える。
- ハザードマップで浸水深が2mを超える。
- N値3未満の軟弱層が8m以上続く。
これらは「お金と安全の分岐点」です。地盤改良費・金利増・火災保険料増加などの金銭面、災害リスク・不安などの金銭面以外の部分をよく考えてください。さらに、地盤リスクのある家は売却時にも値下げを迫られることが多く、実際の損失は倍近くに膨らむことも珍しくありません。心配を抱えたまま長年暮らすストレスを考えれば、いったん見送り、別の土地を探す方が長期的には得策なることもあります。
まとめ
- STEP 1
机上と現地で危険サインをチェックして候補を絞る。
- STEP 2
第三者調査でデータ精度を上げ、追加費用を先読みする。
- STEP 3
リスクを金額化して値引き交渉の根拠に使う。
- STEP 4
改良費込みの返済計画を立て、本当に払えるかを確認。
- STEP 5
10%・2 m・N 値のいずれかに当たれば勇気を持って撤退。
5つのステップを順番に実行すれば、感情に流されず、数字とデータで土地を判断できるようになります。結果として、買うと決めても、買わないと決めても、後悔のない選択が可能になります。
よくある質問(FAQ)—軟弱地盤と地盤改良の基礎
Q1. 軟弱地盤かどうか、素人でも簡単に確認できますか?
A. 完全には判定できませんが、雨後に水たまりが長時間残ったり、ブロック塀にL字形のひびがある場合は注意サインです。最終判断は専門の地盤調査が必要です。
Q2. スウェーデン式サウンディング試験とボーリング調査の大きな違いは何ですか?
A. SWS はロッドを回して土の抵抗を測る簡易試験で費用が抑えられます。ボーリングは試料を直接採取し土質と地下水位を詳しく把握でき、そのぶんコストが高くなります。
Q3. 地盤改良後に再び沈下することはありますか?
A. 工法選定が適切で品質管理が徹底されていれば再沈下のリスクは低いですが、軟弱層が深く地下水位が高い場合は長期的な監視が推奨されます。
Q4. 地盤保証は中古住宅に引き継げますか?
A. 保証会社によります。名義変更に対応(譲渡特約)していれば、売却時に保証書を引き継ぐことで査定アップにつながります。
Q5. 改良費を住宅ローンに組み込むメリットとデメリットは?
A. 手元資金を温存できる点はメリットですが、金利上乗せで総返済額が増える点がデメリットです。金利差と利息総額を必ず比較しましょう。
Q6. ハザードマップで液状化リスクが「大」の土地でも買う価値はありますか?
A. 改良費が土地価格の10%以下に収まり、地盤保証を付けられるなら投資として成立することがあります。ただし将来の売却難易度は高めになります。
Q7. 六価クロムが心配ですが、柱状改良を避けたほうが安全ですか?
A. 現在は低クロム固化材が主流で、溶出試験をクリアした材料を使えば健康リスクは大幅に低減できます。工事報告書で材質名を確認しましょう。
Q8. 地盤改良工事の日数はどのくらい見ておけばいいですか?
A. 表層改良で2~3日、柱状改良で3~5日、鋼管杭で2~4日が目安です。天候や搬入路の状況で延びる場合もあります。
Q9. 地盤調査を依頼するとき、複数社の見積もりを取るべきですか?
A. はい。同じ試験でも装置の校正や解析方法で費用と精度に差が出るため、最低2社から見積もりと試験提案を受けて比較することを推奨します。
Q10. 改良費を節約するコツはありますか?
A. 建物を軽量化して荷重を下げる(鉄筋コンクリート造から木造に)、基礎形状を工夫して杭本数を減らす、自治体の補助金を活用する—この3点を組み合わせると総コストを2割程度圧縮できるケースがあります。
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