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投稿日:2026/02/09

現状有姿=免責ではない!不動産売買トラブルと契約不適合責任の現実

現状有姿=免責ではない!不動産売買トラブルと契約不適合責任の現実

「現状有姿って書いてあれば、売主はもう責任を負わないんですよね?」

「不動産売買でトラブルになったら、契約不適合責任はどうなるの…?」

 

不動産売買の契約書にある「現状有姿」は、現況のまま引き渡すという条件を示す言葉であって、免責の魔法の言葉ではありません。雨漏り・設備不良・境界や残置物など、典型的なトラブルは“書いてあるから大丈夫”という油断から起きます。契約不適合責任や法的責任がどこまで残り、どこで線引きされるのか。売主の説明義務、買主の確認手順、免責特約の作り方、そして発生後の初動まで、失敗しないための実務を段取りで解説します。松屋不動産販売株式会社 代表取締役の佐伯慶智が、初心者でも読み進められるように要点をかみ砕き、契約書チェックの勘所までお伝えします。

 

 

現状有姿の意味と現況渡しの違いを整理する

現状有姿(げんじょうゆうし)とは、不動産を現在のありのままの状態で引き渡す契約条件を指します。売主がリフォームや撤去を行わず現況のまま引き渡すもので、「現況渡し」「現状渡し」「現況有姿」などほぼ同じ意味の表現があります。法令上の明確な定義はないため、契約当事者間で何をもって現状とするかを事前に共有する必要があります。

現況有姿って言うけれど

 

現状有姿と現況渡しの違いを契約実務の視点で整理する

契約実務上、「現状有姿」と「現況渡し」に大きな違いはなく、どちらも売主が物件に手を加えずそのまま引き渡す特約です。ただし、この条項だけでは売主の契約不適合責任まで免除されたとはいえません。実際には別途免責特約を設けなければ、隠れた欠陥について現状有姿でも売主が責任を負う可能性があります。現状有姿だからといって売主の責任が自動的に消えるわけではない点に注意が必要です。

 

引渡し時点で何を現状とみなすのか対象範囲を明確にする

「現状有姿」で引き渡す際は、どの時点の状態を現況とするかと対象範囲を明確に決めておきましょう。通常は契約締結時点(内覧時点)の状態を指しますが、引渡しまでに変化・劣化があった場合の扱いを合意しておく必要があります。また現況に含める物(建物・設備・備品・残置物など)も具体的に取り決めます。例えば付帯設備表にエアコンや給湯器等の有無・動作状況を記載し、「残置物は○○を除き買主が承継する」等の特約で合意します。こうして現状の定義を契約書で固定しておけば、後日の食い違いを防げます。

付帯設備表

 

現状有姿が用いられやすい売買を把握し想定トラブルを先回りする

現状有姿特約は、中古戸建や古家付き土地などで多く用いられます。売主にとって解体や修繕の費用負担を抑えられるメリットがありますが、その物件には雨漏りやシロアリ被害、給排水故障など潜在的な欠陥が残っているリスクが高いです。実際、引渡し後にそうした不具合が発覚し売主が対応するケースも少なくありません。さらに境界未確定や違法建築部分など権利・法令上の問題が放置されていることもあります。典型的なトラブルには、引渡し後に判明する建物欠陥、設備機器の不良、境界や通行権の未整理、地中埋設物や地盤・擁壁の問題、残置物処理を巡る対立、心理的瑕疵や近隣トラブルの告知漏れなどがあります。現状有姿特約が利用される売却では、売主は物件状況を十分調査・告知し、買主もリスクを理解した上で対策を講じておくことが重要です。

 

 

契約不適合責任と現状有姿の関係を正確に押さえる

現状有姿特約を付けても、売主の契約不適合責任(契約内容に適合しない場合の責任)が当然に消えるわけではありません。契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)とは、引渡された物件が契約の種類・品質・(数量)に適合しない場合に売主が負う責任です。買主はその場合、売主に対し修補・代金減額・損害賠償・契約解除といった法定の請求を行えます。以下では現状有姿特約と契約不適合責任の関係を解説します。

契約不適合責任についてはコチラ⇒不動産売買契約における『契約不適合責任』を基礎から学べる入門編!

 

契約不適合責任で買主が取り得る請求を理解し交渉の前提を揃える

契約不適合責任が生じた場合、買主は売主に対し次のような請求ができます(民法で定める4つの手段)。

 

  • 修補の追完請求

不適合部分を修理してもらう請求。

 

  • 代金減額請求

不適合の程度に応じ売買代金の減額を求める請求。

 

  • 損害賠償請求

不適合による損害について賠償を求める請求。

 

  • 契約解除

不適合が重大で修補不能な場合、契約を解除して代金返還を求める請求。

 

通常はまず修補を求め、難しければ減額、それでも解決しなければ解除と段階的に検討します。契約解除は社会通念上軽微でない重大な不適合でないと認められません。これら買主の権利と順序を双方が理解しておけば、トラブル発生時にも現実的な解決策の範囲内で話し合いができます。

 

現状有姿の記載だけで責任が消えない理由を信義則も含めて理解する

契約書に「現状有姿で引き渡す」と書かれていても、それだけで売主の契約不適合責任が免除されるわけではありません。現状有姿条項は「現況のまま渡す」趣旨に過ぎず、責任を免除する特約とまでは解釈されないのが一般的です。裁判例でも、買主が把握していた不具合(外観上明らかな欠陥)については請求できない一方で、買主が契約時に知り得なかった隠れた欠陥は現状有姿でも売主が責任を負うと判断されています。つまり、現状有姿とする特約があっても売主が告知しなかった見えない欠陥については責任追及を免れないのです。真に責任を免除したいなら、別途「契約不適合責任を免除する」特約を設ける必要があります。現状有姿条項のみで安心せず、免責条項の有無を含め契約書全体をしっかり確認しましょう。

 

免責特約が有効になりやすい条件と無効になりやすい条件を押さえる

契約不適合責任を免除する特約(免責特約)の有効性は契約当事者の属性や条項内容によって異なります。売主・買主が個人同士であれば、合意により責任を免除する特約は有効になりやすいです。一方、売主が宅建業者で買主が一般消費者の場合、宅建業法40条により免責特約自体が無効となります。また、売主が事業者で買主が消費者なら、消費者契約法の規定で一方的に買主の権利を奪う特約は無効となります。さらに、売主が知っていた重大な欠陥を告げなかった場合や故意・重過失がある場合は、どんな免責特約を付けていても責任追及を免れにくいです。つまり免責特約は、法律に反せず公正な範囲で合意されたときのみ有効であり、法の強行規定に抵触したり悪質な隠蔽があったりすると無効になると心得ましょう。

契約不適合責任

宅地建物取引業法

(担保責任についての特約の制限)

第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

2 前項の規定に反する特約は、無効とする。

出典:e-GOV法令検索>宅地建物取引業法>第40条

 

消費者契約法

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項<以下省略>

出典:e-GOV法令検索>消費者契約法>第8条

 

通知期限と手続の不備が紛争を拡大させるため期限管理を徹底する

契約不適合が判明した際の買主から売主への通知期限とその手続方法は、トラブル対応で極めて重要です。民法では買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと権利を失いますが、実務では契約書で「引渡しから◯ヶ月以内」など短めの期間を定めることも多いです。買主はこの期限を厳守し、決められた方法(書面通知など)で速やかに売主へ不具合を知らせる必要があります。通知が遅れたり口頭だけだったりと、売主に「期限切れ」や「聞いていない」と主張されて紛争が長引きます。期限管理を徹底し、内容証明郵便など記録が残る形で正確に通知することが大切です。初動で迅速・的確な通知を行えば、相手の誠実な対応を引き出しやすくなり、トラブルの拡大防止につながります。

 

 

売主の説明義務を徹底して現状有姿を機能させる

現状有姿だからといって売主が何も説明しなくて良いわけではありません。売主は知っている物件の不具合や事情を買主に告知する法的義務があります。説明を怠れば、たとえ現状有姿特約や免責特約を設けていても責任追及を免れられない場合があります。現状有姿取引を円滑に進めるには、売主が物件について知り得る情報を漏れなく開示することが不可欠です。ここでは、何を告知すべきか・どこまで調査すべきか、そして書面で情報提供する工夫について解説します。

 

告知すべき情報と告知の対象外になり得る情報を線引きして整理する

売主が買主に必ず告知すべき情報は、物件の価値や安全性に影響する重要事項です。具体的には雨漏りやシロアリ被害、給排水故障などの物理的瑕疵、過去の火災や増改築の履歴、建物の傾き、土地なら土壌汚染や地盤沈下、地中埋設物、境界トラブルなどが挙げられます。心理的瑕疵や近隣トラブルなども重要なら告知すべきです。逆に、誰が見ても分かる経年劣化(小さな傷・汚れ)などは改めて説明しないこともあります。また売主が知らない細かな不具合まで完全に告知するのは現実的に難しいです。迷ったら「言うべきか悩む事ほど積極的に伝える」との方針で、告知漏れによる紛争リスクを減らしましょう。

 

不告知や虚偽説明が招く法的責任と取引上の致命傷を理解する

売主が知っているのに告げなかったり、虚偽の説明をしたりした場合、法的にも取引上も深刻な結果を招きます。法的には、契約の重要事項について欺いたとみなされれば契約取消や損害賠償を請求され得ます。現状有姿条項や免責特約があっても、売主の故意による不告知であれば免責は認められません。取引上も、こうした不誠実な対応は買主との信頼関係を崩壊させます。買主は「騙された」と感じ、話し合いでの解決が困難になるでしょう。仲介業者にも迷惑が及び、場合によっては仲介業者からも損害賠償を請求されるリスクがあります。つまり、不告知・虚偽説明は取引上の致命傷となり得るのです。現状有姿を有効に機能させるため、売主は言いにくい情報ほど正直に伝える姿勢が肝心です。

正直に伝えることの大切さがわかる記事はコチラ⇒告知事項と説明義務を徹底解説:不動産取引の義務と期限

 

調査しない判断が許される場面と調査不足が問題化する場面を区別する

売主には知っている事実の告知義務がありますが、すべてを積極的に調査する義務までは負いません。しかし、調査不足が後で問題視される場合もあります。例えば、明らかな雨染みがあるのに原因を確認せず放置していれば「気づけたはず」と責められかねません。特に宅建業者などプロの売主は高度な調査・説明責任を課されます。一方で売主自身も認識できないような隠れた欠陥まで調査せよとは要求されません。ポイントは、常識的に確認すべき点(境界やシロアリ痕跡など)を怠らなかったかどうかです。許される「調査しない判断」はそうした点が無かった場合に限られ、明らかな兆候の見逃しは問題となります。売主は最低限チェックすべき事項を確認し、不明な点はそのまま正直に買主に伝えて判断を委ねるべきです。

積極的に伝えることは

 

物件状況報告書と設備表を整備し履歴と写真と補修記録で曖昧さを消す

売主は、物件に関する情報を書面で明示することで後々の曖昧さを減らせます。具体的には「物件状況報告書(告知書)」と「付帯設備表」を用意し、売主の知る限りで物件の状況を詳細に記載します。物件状況報告書には雨漏り・シロアリ被害の有無や補修歴、設備の不具合状況、境界や越境の有無などをチェックリスト形式で記入し、買主に交付します。付帯設備表ではエアコンや給湯器などについて有無・残置の有無・故障の有無を一つ一つ明示します。双方がこれら書類に署名すれば、口頭説明の行き違いを防げます。さらに必要に応じて写真や修繕記録を添付すると効果的です。例えば雨漏り修理を行った箇所は施工写真や領収書を示し、シロアリ防除済みならその保証書を付けます。こうしたエビデンスにより引渡し時の現況を巡る認識齟齬を無くし、契約後の紛争予防につながります。

 

 

現状有姿で揉める典型トラブルを原因から理解する

現状有姿取引で起こりがちな典型トラブルを理解し、原因から対策を考えましょう。

 

雨漏りやシロアリなど建物不具合が後から発覚して争いになる

雨漏りやシロアリ被害など建物の重大な欠陥が引渡し後に判明すると、買主は修補や損害賠償を求めることがあります。売主も「現状有姿だから」と主張しますが、契約時に認識できなかった隠れた欠陥であれば売主が責任を問われる可能性が高いです。売主は兆候を事前に告知し、買主もインスペクション等で確認しておくのが望ましいです。発生後は証拠を示しつつ冷静に協議する必要があります。

建物状況調査(インスペクション)・既存住宅売買瑕疵保険については下記記事をご参照ください。

既存住宅の安全性チェック:ホームインスペクション入門

中古住宅購入のリスクと既存住宅売買瑕疵保険という回避策

 

給排水や給湯など設備不良と設備表の曖昧さが争点になりやすい

水回り・設備:蛇口をひねって水圧や排水を確認。水漏れや詰まりがないかチェック。給湯器やトイレも動作を確かめ、エアコンなど残置予定の機器も可能なら試運転してみる。

設備の不具合も典型的な紛争ポイントです。引渡し後に給湯器や空調が故障していたと分かると、買主は「直してもらえるはず」と不満を述べ、売主は「現状有姿だから保証しない」と対立します。特に付帯設備表の記載が曖昧だと認識違いが生じやすいです。防止には、設備表に各設備の動作状況を明記し「現況渡し(不具合あり)」と双方で確認しておくことが重要です。万一トラブルになった場合も、契約時の書面をもとに負担者を判断し、折半など妥協点を探ることになります。

 

境界未確定や越境や通行掘削など権利関係が未整理で難航しやすい

土地の現状有姿では、境界が確定していない、隣地との越境、私道の通行権・掘削権が未整理といった問題が残っていると、取引が難航したり紛争化したりしやすいです。例えば、境界不明のままでは隣人と後でトラブルになり、越境物(塀・樋など)があれば撤去交渉が必要になるかもしれません。これらは契約前に測量や隣地との協議で整理しておくのが理想です。現状有姿でそれをしない場合、買主がリスクを承知で引き受ける代わりに価格交渉することもあります。いずれにせよ、権利関係の未整理は将来の紛争の火種になるため、契約前にできる限り解消し、難しければ特約で明示しておきましょう。

 

地中埋設物や地盤や擁壁の問題が顕在化し費用負担が争点になりやすい

土地や古家付き物件では、地中埋設物(廃棄物・旧基礎など)や地盤沈下、老朽化した擁壁の問題が後から発覚し、費用負担の争いになりがちです。解体工事中に地中から大量のゴミが出て処分費がかかった、新築前に大規模な地盤改良が必要と判明した、擁壁が基準を満たさず造り直しになった――といったケースです。買主は想定外の出費に納得できず、売主に費用負担を求めることが多いです。契約時に売主が知らなかった場合でも、建築に重大な支障をきたす埋設物の発見は契約不適合責任となる可能性があります。売主は把握している情報を必ず告知し、買主も必要なら地盤調査を行うべきです。発覚後は専門業者の見積もりを取り、双方納得の上で費用分担を協議します。

 

残置物処理の範囲が不明確で撤去費用と引渡し条件が衝突しやすい

現状有姿では、残置物(売主が置いていく家具や不要品)の扱いが曖昧だとトラブルになります。買主は「空っぽにして渡してくれる」と思い込んでいたのに、売主は「現状のまま渡すから残して当然」と認識して衝突するケースです。大型家具や大量のゴミの処分費用が誰負担かでもめることもあります。これは契約時に残置物の有無や撤去義務を明記することで防げます。例えば「〇〇は売主が撤去し、その他動産は買主が引き継ぐ」と特約に定めておきましょう。そうすれば引渡し当日に「聞いてない」といった対立を避けられます。

 

心理的瑕疵や近隣トラブルの説明不足で信頼関係が崩れ紛争化しやすい

過去の事件・事故といった心理的瑕疵や近隣の騒音・嫌がらせなどの環境トラブルを売主が説明しなかった場合、発覚後に買主との信頼関係が一気に崩れやすいです。例えば自殺事故があったことを黙っていた場合、買主は知れば大きな精神的負担となり契約解除や損害賠償を求めるでしょう。現状有姿特約があっても、重要事実の不告知は免責されません。近隣トラブル(暴力団事務所の存在など)も後から露見すれば大紛争になります。売主は言いにくい内容でも誠実に伝え、買主も不安な点は必ず確認すべきです。心理的事項は特に信頼が決め手ですから、説明不足は致命的だと認識しましょう。

 

現状有姿が通りにくい例外パターンを先に把握する

現状有姿とする特約があっても通用しにくいケースがあります。例えば、売主が重要な事実を隠した場合、特約でカバーしていない論点が残っている場合、広告・説明内容と契約条項が矛盾する場合、買主が通常想定できない欠陥があった場合などです。こうしたケースでは現状有姿でも売主が責任を問われたり、紛争に発展しやすかったりします。事前に想定して備えておきましょう。

 

重要事実の不告知や虚偽説明があると現状有姿では守れない

売主が重要な欠陥を知りながら告げなかったり虚偽説明をしたりした場合、現状有姿特約では守りきれません。例えば雨漏り歴を隠して「雨漏り無し」と説明したようなケースでは、現状有姿でも契約解除や損害賠償の対象になり得ます。裁判でも売主の悪質な不告知は免責を認めない傾向です。現状有姿は「あくまで現状で納得して買う」という合意なので、その前提を欺けば特約は無意味になります。現状有姿でも嘘は通用しないと肝に銘じましょう。

 

特約の対象範囲が限定され別論点が残って争いになる

免責特約を付けても対象外の論点が残っていると、そこが争点になります。例えば特約で「建物の瑕疵は免責」としても、土地の地中障害や境界問題などは特約に含まれていなければ後から買主に追及される可能性があります。契約書に書かれていない事項については現状有姿でも決着していないためです。したがって特約はできるだけ網羅的にし、逆に免責しない例外も明示して隙間を作らないようにします。抜けがあれば「そこは免責の範囲外だ」として争いになる恐れがある点に注意しましょう。

 

広告や重要事項説明書や口頭説明との矛盾が後から問題化する

契約前の広告や重要事項説明、口頭での説明内容と契約書上の現状有姿特約が矛盾すると、後で大きな問題になります。例えば、広告で「設備良好」と宣伝していたのに契約書では免責となっている場合、買主は説明との食い違いに不信感を抱きます。実際、契約後に不具合が判明した際「事前に問題ないと言われた」として紛争になることがあります。解決策は契約条項と事前説明内容を一致させておくことです。広告や営業トークでも現状に沿った表現を心がけ、契約時にも再度誤解がないよう確認しましょう。矛盾を放置すると、現状有姿条項の効力自体が疑われる結果になりかねません。

 

買主が合理的に想定できない不具合は争点として残りやすい

買主が通常の注意では予見できない欠陥が後から見つかった場合、現状有姿でも争点として残りやすいです。例えば、地中の土壌汚染や、契約時に全く情報のなかった再建築不可などの法的欠陥が判明したケースです。買主としては想定外で受け入れ難いため、「現状有姿でもこれは聞いてない」と主張するでしょう。裁判でも、買主が認識不能なリスクまで買主に負わせるのは酷だとして、売主責任を認める例があります。売主は知っているリスクはできる限り伝え、買主もリスクゼロはあり得ないことを理解した上で、価格や条件に反映させることが重要です。

 

 

売主側の実務対策で揉めない取引に変える

以上を踏まえ、売主側が取れるトラブル予防策をまとめます。(1)必要な調査を行い、物件状況を把握する、(2)契約書で免責特約の内容を具体化する、(3)不具合に対処する方針を決める(補修か代金調整か)、(4)売主の立場(個人か業者か)で説明・リスク対応を変える、の4点です。

 

必要な調査の水準を定めインスペクション等の活用を判断する

売主は売却前に物件の状態をどこまで調査するか決めます。築古物件ならホームインスペクション(建物状況調査)を依頼し、隠れた不具合がないか確認しておくのも有効です。費用はかかりますが、判明した不具合は先に補修したり、告知する事が出来たりして、買主に「検査済み」で安心感を与えられます。インスペクションまでしない場合も、自分でできる範囲の確認(雨漏り跡やシロアリ痕跡、設備の作動チェック、役所での違法建築の有無確認など)は怠らないようにします。特に業者売主は法律上も説明義務が重いため、専門家を動員してでも調査すべきでしょう。事前調査を徹底すれば、売主自身も知らなかった欠陥による紛争を未然に防げます。

 

免責の範囲と例外と期限を具体化し曖昧さを残さない

現状有姿条項を契約書に入れる際は、同時に契約不適合責任を免除する特約を具体的に定めましょう。何を免責し何を例外とするか、通知期限はいつまでか明記します。例えば「売主は本物件の品質・機能・法令遵守状態について契約不適合責任を負わない。但し、売主が故意に告知しなかった事項はこの限りでない。買主は不適合を知った日から◯カ月以内に通知するものとする」等です。こうすれば売主買主双方が責任範囲を誤解せずに済みます。曖昧な免責条項は後々解釈が割れる原因になるため、免責事項・例外事項・通知期限を盛り込んで明文化することが肝要です。

 

補修して引き渡すか代金調整にするかを費用とスピードで判断する

売却前や契約交渉中に不具合が見つかった場合、売主が直してから引き渡すか、そのまま引き渡して代金を値引きするか選択肢があります。判断基準は費用負担と時間です。例えば軽微な雨漏りなら売主負担で修繕してから渡した方が買主も安心でトラブルになりません。一方、大掛かりな補修が必要だったり時間がなかったりした場合、修理せずその分価格を下げて売る方法も現実的です。買主も自分好みにリフォームする予定なら値引きの方が柔軟に対処できます。大事なのは、売主買主が合意できる形に落とし込むことです。補修して渡す場合は内容を契約書に明記し、値引きする場合もその理由を双方で認識共有しておきましょう。

 

個人売主と事業者売主で説明の濃度とリスク設計を変える

売主が宅建業者(不動産業者)か個人かで、現状有姿取引の対応策は異なります。宅建業者が売主で買主が個人の場合、宅建業法により売主は引渡し後最低2年間の契約不適合責任を負う義務があり、免責特約は無効です。したがって業者売主は現状有姿でも主要な欠陥について保証責任を負い、事前にしっかり調査・告知し、必要なら補修してから引き渡すべきです。説明内容も詳細になります。一方、個人売主の場合、免責特約が有効となる余地があるため契約で「現状有姿につき契約不適合責任免除」と定めることがよくあります。但し、だからといって説明を怠って良いわけではなく、隠れた重大欠陥を黙ったまま売れば結局責任を問われかねません。要するに、業者売主は責任前提で手厚く対応し、個人売主は免責を活用しつつ誠実に情報開示するという方針で、立場に応じたリスク設計を行うことが肝心です。

 

 

買主側の実務対策で後悔を防ぐ

買主も受け身にならず主体的に対策を講じることで、現状有姿取引での後悔を防げます。(1)内覧時の徹底チェック、(2)疑問点の書面記録、(3)測量やインスペクションの活用検討、(4)不具合発見時の交渉準備、(5)契約条件の明確化、これら5つのポイントを解説します。

 

内覧で見るべき場所と確認事項をチェックリスト化して見落としを減らす

内覧チェック:屋根・外壁から室内の隅々まで、水回りや設備も含めて丹念に確認しましょう。境界標や隣地との位置関係も要チェックです。見落とし防止のため必要なら専門家の検査も検討してください。

内覧時は、屋根・基礎のひび割れや雨染み、室内のカビ臭や床のたわみ、ドアや窓の建付け、水回りの水漏れや排水状況、給湯・空調設備の動作などを一つ一つチェックします。チェックリストを用意し、漫然と見ず細部まで確認することで「気づかなかった」を減らせます。自信がなければホームインスペクションを依頼するのも有効です。現状有姿では買主が現況に納得して買う前提ですから、納得できるまで自分で物件を調べる姿勢が重要です。

中古住宅の内覧時における注意点はコチラ⇒中古住宅購入は内覧が命!初めての方向けチェックポイント【室内編】

 

質問と回答を文章で残し認識違いと後日の紛争を防ぐ

内覧や交渉で生じた疑問点は必ず売主・仲介に質問し、その回答を書面やメールで残すようにしましょう。例えば「雨漏りはありませんか?」「隣地との境界は明示されていますか?」「エアコンは置いていきますか?」といった質問と回答を記録に残します。口頭だけでは後で食い違いが起きやすいですが、文章で残せば双方の認識を固定でき、万一の紛争でも証拠となります。実際、多くの仲介業者は買主からの質問書を用意し、売主に署名させて重要事項説明時に確認します。現状有姿取引では特に「言った/聞いてない」が命取りなので、Q&Aを必ず文書化しておきましょう。

 

測量と境界確認とインスペクションをどこまで求めるかを決める

買主は契約前にどの程度の専門調査を求めるか決めておきましょう。土地であれば境界確定測量や隣地立会いを売主に条件として求めるか、自費で実施するかを検討します。境界が曖昧なままでは将来不安が残るため、費用はかかっても測量図を用意し境界標を確認するのが安全です。建物ならホームインスペクション(建物検査)を依頼するか決めます。これも数万円の費用負担がありますが、見えない欠陥を事前に把握でき、結果によっては契約内容の交渉材料にもなります。逆に、買主がある程度リフォーム前提でリスクを織り込めるなら、調査を省略して早期契約を優先する選択もあります。重要なのは自分のリスク許容度に応じて必要な調査を決めておくことです。「やはり調査すべきだった」と後悔しないよう、契約前にしっかり検討しましょう。

 

不具合発見時の交渉ルートを用意し補修や減額や条件調整に備える

買主は、契約後・引渡し前後に不具合を発見した場合の交渉ルートを想定しておくと安心です。例えば、契約前のインスペクションで不具合が見つかったら売主に修補してもらうのか、代金減額交渉するのか、契約自体を再考するのかといった判断基準を持ちます。契約後に判明した場合は、証拠を揃えて速やかに売主へ書面で通知し(期限遵守が重要)、修補要求・費用負担交渉を行うことになります。この際、最初から感情的に契約解除を突きつけるのではなく、修補や減額など現実的な落とし所を探る方が建設的です。仲介業者に間に入ってもらうのも有効でしょう。さらに交渉が決裂する場合の専門家(弁護士等)への相談タイミングも決めておきます。要は、問題発覚→証拠確保→売主通知→話し合い→必要なら専門家介入という流れをイメージし、慌てず冷静に対応することが大切です。

 

設備と残置物と期限を条件で固め現状有姿でも安心できる形にする

買主が現状有姿でも安心して契約できるよう、契約条件を明確に定めておくことが重要です。付帯設備と残置物の扱い、各種手続きや引渡しまでの段取りなど、気になる点は全て契約書に盛り込みましょう。例えば「エアコン2台は現況のまま残置し買主が引き継ぐ」「売主はダイニングテーブルを引渡し前日までに撤去する」「境界確定測量は売主負担で実施する」等です。期限や方法も具体的に定めておけば安心感が違います。現状有姿取引では曖昧な部分が不安材料になるため、契約条件をできるだけ具体化し不安要素を残さないことが、買主の後悔防止につながります。

 

 

契約書は現状有姿条項だけで判断しない

契約書を確認する際、「現状有姿で引き渡す」との条項だけを見て安心しないよう注意しましょう。契約書には他にも契約不適合責任に関する条項や各種特約、付帯資料(設備表・告知書)などがあり、それらを総合して権利義務が決まります。現状有姿の文言はその一部に過ぎません。実際、トラブルは現状有姿条項以外の部分から生じるケースも多いです。したがって契約時は現状有姿条項だけでなく、関連する条項すべてを確認して整合性を取ることが必要です。以下、特にチェックすべきポイントを挙げます。

 

契約不適合責任条項の免責と例外と期間と通知方法の整合を確認する

契約書中の契約不適合責任に関する条項をよく読みましょう。売主がどこまで責任を負うか、免責する場合の例外や条件、買主が通知すべき期間・方法などが書かれています。例えば「売主は一切の契約不適合責任を負わない(ただし売主の故意・重過失によるものを除く、通知期間○ヶ月)」等です。現状有姿条項と矛盾がないか確認します。もし片方で「免責」となっているのに別条項で「雨漏り等主要瑕疵について◯ヶ月責任を負う」と定めていれば要注意です。どちらが優先か仲介者に確認し、必要なら修正してもらいましょう。契約不適合責任の特約部分は難解ですが、曖昧な点は必ず質問し、納得してから署名することが大切です。

 

付帯設備と残置物と引渡し条件を確認し現状の定義を固定する

付帯設備表や物件状況報告書(告知書)、契約書の特約欄を確認し、現況がどう定義されているか把握します。付帯設備表では、引渡し時に残る設備とその状態(故障の有無)が記載されています。例えばエアコンが「有(冷えず故障)」と書かれていれば、そのまま故障品を引き継ぐ前提です。残置物の扱いも契約書でチェックしましょう。「現況有姿につき売主は残置物を撤去しない」等の文言があれば、買主が全て片付けることを承諾している意味です。鍵の本数やハウスクリーニング実施の有無など引渡し条件も確認します。要するに、契約書と添付資料から何がどの状態で引き渡されるか(現状の定義)を読み取り、不明点は契約前に解決しておくことです。これを怠ると後で「聞いてない」という紛争につながります。

 

境界と越境と通行掘削とライフライン条項を確認し将来紛争を防ぐ

土地建物の契約書には、境界・越境・通行掘削権やライフライン(上下水道・ガス・電気)に関する条項もあります。例えば「本物件は現況有姿の引渡しとし、境界に関する責任は負わない」「本物件に隣接地の工作物の越境あり、買主は承継して容認する」などです。こうした条項があれば内容をしっかり理解します。境界保証がないなら、後日境界問題が生じても売主は責任を負いません。越境物があるならその処理方針が明記されているか確認しましょう。インフラ面では、水道が私設管だったり、下水道供用地域であるのに合併浄化槽を使用中だったり場合など、通常と異なる状況は重要事項説明書に記載されています。将来の紛争防止のため、契約書と重要事項説明書の権利関係・設備に関する記載を熟読し、不明点を残さないことが大切です。必要に応じて専門家に相談し、リスクに対する手当て(承諾書の取得等)をしておきましょう。

 

解除と損害賠償と合意管轄が最終局面で効くことを理解する

契約書の終盤には契約解除や違約金・損害賠償、紛争時の合意管轄裁判所に関する条項があります。これらは普段意識しませんが、最終局面では重要になります。手付解除やローン特約による解除期限、違約金(手付金没収や倍返しなど)の条件、訴訟になった場合の管轄裁判所(合意管轄)が決められています。契約書のこれら最終局面の規定も確認し、万一の場合のリスクを把握しましょう。

 

 

トラブル初動と解決手順を誤らない

現状有姿取引でトラブルが起きた際、最初の対応がその後の結果を大きく左右します。適切な初動を取れば円満解決の可能性が高まり、誤った対応をすると紛争が拡大・長期化します。ここではトラブル発生直後の基本手順を買主側の視点で説明します(売主も相手の動きを知る上で有用です)。(1)事実確認と証拠確保、(2)迅速かつ正確な通知、(3)修補・減額・解除・賠償の選択肢検討、(4)話し合いから専門家介入への切替判断、(5)よくある質問で疑問点を整理し、最後に当社代表の総括と提言を述べます。

 

事実を固定して証拠を確保し争点を絞り込む

トラブルの兆候に気づいたら、まず事実関係を把握し証拠を残すことです。例えば、引渡し後に雨漏りを発見したら、いつ・どこから・どの程度漏れたか写真や動画に記録します。可能なら工務店等の専門業者に調査を依頼し、原因や被害状況を書面でもらいます。これで客観的な証拠が残り、後で「本当に雨漏りしたのか?」と争われるのを防げます。また事実を押さえる過程で、問題点がどこに絞られるか見えてきます。感情に任せて「全部けしからん!」と主張するのではなく、具体的な不具合箇所にフォーカスできます。売主側も連絡を受けたら現地確認に協力し、双方で事実認識を共有することが解決への第一歩です。

 

通知は速さと正確さが要であり期限管理と主張整理を徹底する

問題を確認したら、速やかに売主へ正式に通知します。契約で定められた通知期間があればそれを厳守し、内容証明郵便など記録が残る方法で伝えます。通知内容は不具合の具体的状況と希望する対応(例: 修補希望)を明記し、契約◯条に基づく請求であることも触れます。つまり迅速かつ正確な通知が重要です。遅れたり曖昧だったりすると、売主に「知らされていない」「期限外だ」と主張され不利になります。さらに通知前に請求内容を整理し、複数問題があるなら箇条書きにするなど構造化しましょう。素早く的確な通知は相手に本気度が伝わり、的確な対応を引き出しやすくなります。期限管理と主張整理を徹底してください。

 

修補か代金減額か解除か損害賠償かを見立て安易に結論を急がない

トラブルが起きると買主は感情的になりがちですが、安易に極端な要求や結論を急がない方が賢明です。まずは法律上どの救済手段が適切か考えます。一般には修補請求→代金減額→損害賠償→契約解除の順に検討します。軽微な不具合なら売主に直してもらうのが最善で、いきなり解除を求めると交渉決裂を招きます。深刻な欠陥で住めないような場合のみ契約解除を視野に入れるべきです。その判断には専門家の助言も仰ぎましょう。焦らず段階を踏んで解決策を探ることが、結果的に双方の負担を減らします。

 

協議から専門家介入へ切り替える判断基準を持ち調停やADRや訴訟も視野に入れる

当事者間の話し合いで解決が難しければ、専門家の力を借りるタイミングを判断します。目安として、一定期間(例: 2週間)協議して平行線なら弁護士に相談します。また相手が誠意を欠く対応をした場合も早めに専門家を入れた方がいいでしょう。解決手段としては、弁護士を通じた交渉の他、裁判所の調停や業界団体のADR(裁判外紛争解決手続)を利用する方法があります。調停やADRは訴訟より費用・時間の負担が少なく、柔軟な解決が期待できます。もちろん折り合わなければ訴訟も視野に入れます。重要なのは、だらだら自力解決を続けず切り替えの基準を持つことです。適切に第三者を介入させることで、かえって早期に落ち着くケースも多いです。

法務大臣

出典:政府広報オンライン>法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」より一部抜粋

 

よくある質問で整理し修理費負担や免責の限界や通知期限などの疑問を解消する

 

Q: 現状有姿なら欠陥は全て泣き寝入り?

A: いいえ。契約時に知らなかった重大な欠陥なら、引渡し後でも修補や代金減額を請求できます。

 

Q: 売主は説明義務なし?

A: いいえ。売主は知っている重要事項は必ず告知する義務があります。故意に隠していれば免責特約も無効化します(宅建業者なら2年以上の保証義務あり)。

 

Q: 通知期限後に欠陥発見したら?

A: 原則として契約で定めた通知期限を過ぎると売主の責任を問うのは難しいです。ただし悪質な隠匿があれば別途責任追及の余地があります。

 

松屋不動産販売株式会社 代表取締役 佐伯慶智として総括と提言を示す

私より総括申し上げます。現状有姿取引には確かにリスクがありますが、情報開示と合意形成を徹底すれば十分に安全な取引が可能です。売主は全ての知っている情報を開示し、買主も疑問点を解消した上で契約しましょう。お互いが誠実に向き合い、信頼関係を築くことこそ最大のトラブル予防策です。現状有姿でも納得できる取引は必ず実現できます。当社もプロとして皆様の安心・円満なお取引を全力でサポートいたします。

 

 

 

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