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投稿日:2026/05/02

不動産売買で考えるVOCとシックハウス症候群の基本と確認点を解説

不動産売買で考えるVOCとシックハウス症候群の基本と確認点を解説

「不動産売買でもVOCやシックハウス症候群まで確認する必要があるの?」

「新築やリフォーム済み物件の方が、VOC(揮発性有機化合物)が多いってホント?」

 

不動産売買では、価格や立地、間取りだけでなく、住まいの空気環境にも目を向けることが大切です。特に新築住宅やリフォーム後の物件では、建材・接着剤・塗料・家具などからVOCが放散され、シックハウス症候群の原因となる場合があります。目や喉の違和感、頭痛、皮膚の不調などは個人差が大きく、内覧時には気づきにくいこともあります。本記事では、VOCの基本、シックハウス症候群の症状や現状、不動産売買で起こり得るトラブル、契約不適合責任との関係、売主・買主・仲介会社が確認すべき実務上の注意点を、松屋不動産販売の現場目線で分かりやすく解説します。

 

 

不動産売買でVOCとシックハウス症候群に注意すべき理由

不動産売買では、価格や立地と同じくらい、住み始めた後の健康も大切です。日本では1990年代以降、住宅の高気密化や化学物質を放散する建材の使用が問題視され、シックハウス対策として指針値の整備や建築基準法改正が進みました。今もなお、室内環境の問題は「見えにくいのに生活への影響が大きい」ため、売買時に軽く見ないことが重要です。特に入居直後の違和感は、建物の満足度だけでなく、住み続けられるかという根本にも関わります。

 

新築やリフォーム後の住宅ほど室内空気の確認が大切になる

新築住宅やリフォーム直後の物件では、壁紙の接着剤、塗料、床材、下地材、造作家具などから化学物質が放散されやすくなります。国土交通省の「VOC等の濃度測定に関する調査研究」では、内装工事終了後は約30日以上の養生期間を置くことで、VOCの発散がかなり抑えられるとされ、内装仕上げ工事終了から引渡しまでの期間は40日程度以上確保できることが望ましいと示されています。また、造作家具等からもホルムアルデヒドが発散されるため、入居前後は換気計画や家具搬入後の空気環境にも注意が必要です。つまり「新しいから安心」とは限らず、完成直後ほど確認の価値があります。

新築やリフォーム後の住宅ほど室内空気の確認が大切になる

出典:国土交通省>VOC等の濃度測定に関する調査研究より一部抜粋

 

売主・買主・仲介会社の認識不足がトラブルにつながる

売主は「建築基準法に適合しているから問題ない」と考えやすく、買主は「新築やリフォーム済みなら室内環境も安心だろう」と受け取りがちです。また、仲介会社も雨漏り・設備不良・越境などの目に見える不具合を優先し、空気環境の確認が後回しになることがあります。しかし、シックハウス症候群は症状や感じ方に個人差があり、厚生労働省も、発生の仕組みには未解明な部分が多く、化学物質を含む複合要因が考えられると整理しています。だからこそ、売主・買主・仲介会社が「何を確認し、何を断定しないか」を事前に共有することが大切です。認識のズレを残したまま契約へ進むと、入居後の体調不良や不安が、説明不足・契約不適合責任をめぐるトラブルへ発展するおそれがあります。

引用:厚生労働省>化学物質の室内濃度指針値についてのQ&Aより一部抜粋

 

見えない空気の問題だからこそ事前確認が重要になる

空気環境の問題は、雨漏りや建物の傾きのように写真や図面だけで説明しにくく、においの感じ方や体調への影響にも個人差があります。さらに、室内のVOC濃度は、換気の有無、温度、湿度、内装工事からの経過日数、家具の搬入状況などによって変わるため、一度の確認だけで「安全」と断定することは適切ではありません。厚生労働省の測定マニュアルでも、新築住宅等で最大濃度を推定する方法と、居住住宅等で日常生活時の実態を把握する方法が示されており、目的に応じた確認が必要とされています。だからこそ、不動産売買では、いつ、どのような状態で、何を確認したのかを売主・買主・仲介会社の間で共有し、記録に残す姿勢が重要です。

 

 

VOCとは何か|住宅内に発生する揮発性有機化合物の基本

VOCは、揮発して空気中で気体になりやすい有機化合物の総称です。環境省はトルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質を含むと説明しており、住宅内でも建材や生活用品から放散されます。厚生労働省は個別物質ごとの室内濃度指針値に加え、総量を見るTVOCの暫定目標値も示していますが、これは全体状況を見るための目安で、個別物質の評価とは分けて考える必要があります。

VOCとは何か|住宅内に発生する揮発性有機化合物の基本

※13種類のVOCおよび総揮発性有機化合物量(TVOC)

出典:厚生労働省>室内空気中化学物質の測定マニュアルより一部抜粋

 

VOCは建材・接着剤・塗料・家具などから放散される

住宅内のVOCは、合板、壁紙、フローリング、接着剤、塗料、防腐剤、香料、可塑剤、防虫剤など、住まいの中のさまざまな製品が発生源になります。しかも、建物本体だけでなく、造り付け家具やキッチン・キャビネット等の製品も対象となり得ます。国土交通省の調査では、主材料だけでなく副資材まで含めて確認することが重要とされており、不動産の現場でも「何を使ったか」を把握しているかどうかで説明の質が大きく変わります。

 

ホルムアルデヒドだけでなく複数の化学物質に注意する

シックハウスというとホルムアルデヒドだけを連想しがちですが、厚生労働省はアセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、フタル酸エステル類など複数の物質について室内濃度指針値を示しています。2025年にはエチルベンゼンの指針値も改定されました。つまり、単一物質だけで判断するのではなく、複数の化学物質と生活環境全体を見ておく視点が欠かせません。

 

ホルムアルデヒドは、刺激臭を持つ無色の気体(化学式 CH₂O)で、家具や建材の接着剤、塗料、防腐剤として幅広く使用される化学物質です。シックハウス症候群の代表的な原因物質として知られ、高濃度で目や呼吸器への刺激、頭痛を引き起こします。

厚生労働省は室内濃度を0.08ppm(100μg/㎥)以下に保つことを推奨しています。

 

カビ・ダニ・ハウスダストも室内環境悪化の要因になる

室内環境を悪化させる要因は化学物質だけではありません。厚生労働省の相談マニュアルでは、真菌やダニアレルゲンなどの生物学的要因、湿気やダンプネス、結露やカビも健康影響に関わると整理されています。全国規模の疫学研究でも、湿度環境の指標、真菌、ダニアレルゲンが症状と関連していました。不動産売買の現場では、においだけでなく、結露跡、カビ痕、換気不足、清掃状態まで含めて見ることが現実的です。

 

 

シックハウス症候群とは|原因・症状・現状を分かりやすく解説

シックハウス症候群は、住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用などにより、新築・改築後の住宅やビルで居住者にさまざまな体調不良が生じる状態として説明されてきました。ただし、厚生労働省は症状が多様で、発症の仕組みや原因には未解明な部分が多く、複合要因も考えられるとしています。したがって、不動産実務では「単純化し過ぎない理解」がとても重要です。

シックハウス症候群とは|原因・症状・現状を分かりやすく解説

 

シックハウス症候群

出典:愛知県>シックハウス症候群をご参照ください。

 

目・鼻・喉・皮膚・頭痛などに症状が出やすい

代表的な症状としては、目・鼻・喉・皮膚の刺激症状、咳、頭痛、倦怠感、めまい、吐き気、じんましんなどが挙げられます。症状の現れ方は人によって異なり、同じ住まいでも全員に同じ反応が出るわけではありません。不動産取引では「このにおいがあるから必ず発症する」「数値が低いから絶対に大丈夫」といった極端な言い方は避け、あくまで症状の幅と個人差を前提に説明することが、後の誤解を防ぐ現実的な対応です。

 

建物を離れると症状が軽くなるケースがある

シックハウス症候群の特徴として、問題となる建物を離れると症状が軽快するケースがあることが挙げられます。全国調査でも、「症状がいつもあり、家を離れるとよくなる」ものを指標として有意な症状を定義しています。もちろん、建物を離れても改善しない場合や、他の疾患が関係する場合もありますが、入居後の不調が住まいと関係するかを考える際には、この変化が一つの手掛かりになります。

 

罹患率や有症率から見る現在のシックハウス問題

シックハウス症候群の有症率は、どのような定義を採るかで大きく変わります。大規模疫学調査では、定義の違いにより成人女性3.0〜23.3%、成人男性2.9〜16.1%、小児5.6〜19.8%という幅が示されました。一方、全国規模調査で厳しい定義を用いた場合、家屋ごとの有病率は0.8〜2.0%と推定されています。大切なのは、率が一つに定まらないこと自体が、この問題の捉えにくさを示している点です。

出典:J-STAGE>本邦におけるシックハウス症候群の大規模疫学調査より一部引用

 

子どもや高齢者がいる家庭ではより慎重な判断が必要

厚生労働省の相談マニュアルでは、症状によっては幼児や高齢者がハイリスク集団と思われるため注意が必要とされています。さらに、アレルギー歴や湿度環境、ダニアレルゲンなどが症状と関連することも示されています。不動産の現場では、単に「住めるかどうか」で判断するのではなく、乳幼児がいる、在宅時間が長い、高齢者が同居する、においに敏感な家族がいる、といった事情まで踏まえて物件選びをする方が安全です。

 

 

新築・リフォーム済み物件で注意したいシックハウス対策

新築やリフォーム済み物件は見た目がきれいで魅力的ですが、空気の面では「工事が新しい」こと自体が確認ポイントになります。建材・部材の法令適合やF☆☆☆☆表示は重要な手掛かりですが、それだけで個々の暮らしへの適合が決まるわけではありません。内覧時には、工事時期、使用建材、換気設備の有無や稼働状況、家具搬入の時期まで踏み込んで確認することが、実務では非常に有効です。実際的です。

 

高気密住宅では化学物質が室内にこもりやすい

日本では1990年代以降、省エネルギー化に伴って住宅の高気密化・高断熱化が進み、住宅には機械換気設備がほとんどない時代にはシックハウス問題が大きな社会問題となりました。その後、建築基準法改正により、家具等からもホルムアルデヒドが発散されることを踏まえ、居室を有する全ての建築物に機械換気設備の設置が原則義務付けられています。高気密住宅では、換気が前提条件だと理解しておくべきです。

 

内装工事直後はVOC濃度が高くなりやすい

内装工事直後は、塗料や接着剤、床仕上げ材、造作家具などの影響が重なり、VOC濃度が高くなりやすい時期です。国土交通省の調査でも、家具設置直後や一部工事の直後に数値上昇が確認され、施工後の換気と養生期間の重要性が指摘されています。実務では、リフォーム完了日と引渡し日が極端に近い物件ほど慎重に見たいところです。工事完了から入居までの余裕が、そのまま安心材料の一つになります。

内装工事直後はVOC濃度が高くなりやすい

 

内覧時はにおい・換気状況・リフォーム履歴を確認する

内覧では、壁紙や床の美しさだけでなく、入室直後のにおい、窓を開けたときの空気の抜け方、二十四時間換気の有無と作動状況、リフォーム内容と施工時期を確認しましょう。私は不動産実務で、工事会社名、工事項目、主な使用建材、完成日、引渡しまでの換気期間が整理されている物件ほど説明が明確で、後のトラブルも少ないと感じます。気になるにおいがあれば、その場で言語化して記録に残すのが有効です

 

 

不安がある場合は室内空気測定や専門機関への相談も検討する

不安がある場合は、室内空気測定を検討する価値があります。ただし、厚生労働省は、指針値適合の厳密な判定には標準的測定方法又は同等以上の信頼性が必要で、簡易測定はスクリーニング目的にとどまるとしています。また、特定の化学物質が指針値を超えたからといって、直ちに体調不良の原因がその物質だとは判断できません。症状があるなら、測定結果とあわせて医師等へ相談する姿勢が大切です。

 

 

不動産売買で起こり得るシックハウストラブルと契約不適合責任

シックハウスをめぐる売買トラブルでは、単に「体調不良が起きたか」だけでなく、契約でどのような品質が前提とされたのか、どのような説明や広告がなされたのか、記録が残っているのかが大きく問われます。民法改正後は、契約内容への適合が基準となり、買主には追完請求、代金減額、損害賠償、解除という救済手段が整理されました。だからこそ、売買前の言葉と書面が重要になります。

 

発症しただけで直ちに契約不適合になるとは限らない

買主が入居後に体調不良を訴え、シックハウス症候群と診断されたとしても、それだけで直ちに契約不適合と断定できるわけではありません。厚生労働省も、特定の化学物質が指針値を超過していることだけをもって、身体不調の原因をその物質と判断するのは適当でないとしています。法的には、建物が契約内容に適合していたかが中心論点です。診断名だけで結論は出ず、説明内容や資料の有無も丁寧に見られます。症状の発生と、契約上の責任の成立は、分けて考える必要があります。

 

契約書・重要事項説明・広告表現が責任判断に影響する

宅建業者の重要事項説明書は、買主があらかじめ知っておくべき最小限の事項を列記し、取引判断に影響する事項を説明する仕組みです。また、不動産広告には不当な顧客誘引を防ぎ、一般消費者の合理的選択を確保するための表示規約があります。したがって、広告、販売図面、パンフレット、重要事項説明、契約書のどこで何を伝えたかは、後日の責任判断に大きく影響します。現場では、口頭説明だけで済ませないことが肝心です。

 

建材性能や室内濃度について保証した場合は注意が必要

広告やパンフレットで「ホルムアルデヒド放散量の少ない建材を使用」「特定基準の接着剤を使用」などと具体的に打ち出した場合、その説明内容が契約上期待される品質として評価される可能性があります。実際、マンション広告の記載から厚労省指針値以下に抑制された品質が前提と認定され、売主責任が認められた裁判例があります。逆に、明確な合意が立証できなければ、請求が退けられた例もあります。断定表現は慎重であるべきです。

建材性能や室内濃度について保証した場合は注意が必要

出典:国土交通省>新築住宅の性能表示制度 かんたんガイドより一部抜粋

住宅性能評価を受けた住宅のなかで、【6.空気環境に関すること】で高評価を受けた住宅であれば安心できるかもしれません。但し、後にリフォームを施した場合はその限りではありません。

 

リフォーム済み物件でにおいの説明が不足すると争いになる

においは主観差が大きい反面、購入判断に強く影響します。RETIOの裁判例解説でも、売主や媒介業者は、購入判断に重要な影響を及ぼす事項を知っていたか容易に知り得た場合には、信義則上説明義務を負うと整理されています。リフォーム済み物件で強い接着剤臭や塗料臭があるのに、施工時期や換気状況を説明せず、記録も残していないと、後日「説明不足だった」と争われやすくなります。内覧時の所感も含め、事実ベースで残すことが防御になります。

 

先日、私の姉夫婦が実家の近くでマンションを購入しました。実はその前に、現在住んでいるマンションの上階でリフォーム済み物件が売りに出され、購入を前向きに検討していた時期がありました。

 

ところが、内覧に行った際、室内にはいわゆる「新築のにおい(接着剤臭)」が強く残っており、姉は見学中に頭痛を感じたそうです。立地や条件は魅力的だったため、購入を諦めるべきか相当悩んでいました。

 

私にも相談がありましたので、「住まいは毎日過ごす場所だから、不安を感じるなら無理に進めない方が良い」と伝えました。姉夫婦も熟慮した結果、その物件の購入は見送ることにしました。

 

今振り返ると、あのとき価格や利便性だけで判断して購入していたら、入居後にシックハウス症候群のような症状に悩まされていた可能性もあったのではないかと感じています。

 

 

売主・買主・仲介会社が実践したいVOC・シックハウス対策

VOCやシックハウス症候群は、誰か一人が注意しても十分とは言えません。売主は情報を整理し、買主は自分の生活条件を具体化し、仲介会社は確認事項を記録して橋渡しをする。この役割分担がうまく回ると、入居後の「聞いていなかった」「そこまで想定していなかった」を大きく減らせます。不動産の現場で大切なのは、医学的な断定ではなく、確認可能な情報を丁寧に揃えることです。誰が何を確認し、どこまで説明したかが、最終的には信頼にも紛争予防にもつながります。

出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構>シックハウス症候群関連の判例を2つ紹介

指針値を超えるホルムアルデヒドの 瑕疵担保責任が認められた事例

シックハウス症候群に罹患したことについての建築請負業者に対する損害賠償請求が否認された事例

 

売主はリフォーム内容・使用建材・施工時期を整理しておく

売主は、いつ、どこを、どの会社が、どの建材や接着剤で施工したかを整理しておきましょう。可能であれば、建材の等級表示、工事請負書、完了日、換気期間、測定結果の有無まで揃えておくと説明が格段にしやすくなります。国土交通省は、建築確認を要しないリフォームでも建築基準法への適合が必要と示しており、施工記録や材料確認の重要性も繰り返し指摘しています。売却前の資料整理は、そのまま売却時の信頼につながります。

 

買主は体質・家族構成・入居時期を踏まえて判断する

買主は、物件そのものだけでなく、自分たちの暮らし方との相性を考える必要があります。乳幼児や高齢者がいる、アレルギー歴がある、においに敏感な家族がいる、入居を急いでいて十分な換気期間が取れない、といった事情があるなら、同じ物件でも判断は変わります。私の実務感覚でも、家族構成と入居時期を具体的に詰めるほど、確認すべき項目が明確になります。懸念があるなら、遠慮せず測定や再内覧を求めるべきです。

 

仲介会社は断定表現を避けて確認事項を記録に残す

仲介会社は「絶対に安全です」「法律適合だから問題ありません」といった断定を避け、売主から得た資料、買主から受けた質問、現地で確認したにおいや換気設備の状況を記録に残すことが重要です。重要事項説明は最小限事項の説明ですが、広告表示にも適正さが求められます。さらに、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項を知っていた、又は容易に知り得た場合の説明責任も問題になります。記録が残る仲介は、信頼も防御力も高いです。

 

引渡し前後の換気・清掃・家具搬入時期にも配慮する

見落とされやすいのが、引渡し前後の実務です。国土交通省の調査では、家具設置直後に数値上昇がみられた事例があり、工事完了後の換気や清掃、家具搬入時期も室内空気質に影響します。厚生労働省も、TVOCが高い場合は換気の実施、再測定、発生源特定を検討するよう示しています。引渡し前に十分換気し、入居直後に大型家具や新品カーテンを一度に入れ過ぎないことも、実務上の配慮として有効です。

引渡し前後の換気・清掃・家具搬入時期にも配慮する

出典:八王子市公式ホームページ>身近な低VOC製品の選び方ガイドブックより一部抜粋

 

よくある質問|不動産売買とVOC・シックハウス症候群

ここでは、不動産売買の現場で実際によく受ける質問を整理します。契約前に迷いやすい論点を、売主・買主・仲介会社それぞれの立場から確認します。結論を急がず、「何が確認できていて、何がまだ不明か」を分けて考えるのがポイントです。シックハウスは白黒で割り切れないテーマだからこそ、質問の立て方そのものが重要になります。

 

シックハウス症候群が心配な人は、家を購入しない方がよいですか?

一律に「買わない方がよい」とは言えません。大切なのは、不安の中身を分解することです。においが強いのか、工事直後なのか、換気設備が不十分なのか、家族にアレルギーの人がいるのかで判断は変わります。資料が揃っており、再内覧や測定で納得できるなら候補になりますし、確認を求めても情報が出てこないなら見送る判断が合理的です。不安が曖昧なまま契約することだけは避けるべきです。

 

ここで昔から知られるシックハウス対策をひとつ紹介します。それはベイクアウト(ベイクアウト法)といわれる手法です。VOCは夏場などの気温の高い時期に揮発しやすく、十分な換気をおこなわないと室内の濃度が上がり、人体に影響が出やすくなります。ベイクアウトはその性質を利用して、閉め切った室内で温度を上げて有害なVOCを強制的に揮発させたのちに、一気に換気をおこない室外へ排気する方法でおこないます。

シックハウス症候群が心配な人は、家を購入しない方がよいですか?

この手法については、賛否が分かれる(効果は限定的だという意見、高温にするため家具・建材・クロスの劣化、有害物質の再付着など)ので、専門業者によく相談の上、実施するかを判断してください。

 

リフォーム済み物件はシックハウス症候群になりやすいですか?

リフォーム済み物件だから必ずなりやすい、とは言えません。ただ、工事直後は接着剤や塗料、床材、家具設置の影響で空気質が変動しやすく、換気や養生期間が短いと不安が残りやすいのは事実です。逆に、使用建材が整理され、換気期間も十分で、必要に応じ測定まで行われていれば、確認可能性は高まります。重要なのは「リフォーム済み」という言葉ではなく、その内容と時期です。

 

売却後に買主が体調不良を訴えたら売主の責任になりますか?

自動的に売主責任になるわけではありません。契約不適合責任は、建物が契約内容に適合していたかどうかで判断され、買主には通知期間や主張立証の問題もあります。もっとも、売主が知っていたリフォーム内容や強いにおい、広告で示した建材性能などを適切に説明していなければ、責任を問われる可能性もあります。売却前に整理した情報を開示し、説明内容を書面に残すことが最も現実的で実務的な予防策です。

 

室内空気測定をすれば安全と言い切れますか?

言い切れません。厚生労働省は、指針値は法的規制ではなく、短期的に超えたとしても直ちに健康被害が生じるわけではないとしています。また、TVOC暫定目標値は毒性学的知見から決めたものではなく、含まれる全物質が健康影響を持つわけでもありません。さらに、簡易測定は厳密判定ではなくスクリーニングです。測定は有力な判断材料ですが、それだけで絶対評価に変えるものではないと理解するのが適切です。

 

仲介会社にはどこまで説明義務がありますか?

法的には、宅建業法上の重要事項説明がまず基本になりますが、それはあくまで最小限事項です。加えて、購入判断に重要な影響を及ぼす事項を知っていた、又は容易に知り得た場合には、信義則上の説明が問題になることがあります。ただし、仲介会社があらゆる周辺事情を網羅的に保証する立場でもありません。買主側も、におい、家族事情、入居時期などの懸念を具体的に伝え、確認を依頼することが大切です。

 

 

松屋不動産販売:佐伯慶智からの助言|見えない空気の不安こそ丁寧な確認が大切です

私が不動産売買の現場で強く感じるのは、空気の問題は「大丈夫そう」で流してしまうほど後から話がこじれやすいということです。新築、リフォーム済み、築浅といった言葉は安心材料にはなっても、確認不要の根拠にはまったくなりません。工事時期、使用建材、換気設備、入居までの期間、家族の体質。この五つを言葉にして確認するだけでも、判断の精度はかなり上がります。急いで買うより、納得して買う。その姿勢が、見えない不安への一番堅実な向き合い方だと考えています。売る側も、隠さないこと、断言し過ぎないこと、確認した事実を残すこと。この三つを徹底するだけで、取引の質は大きく変わります。

 

 

まとめ|不動産売買ではVOCとシックハウス症候群を軽く見ないことが大切

不動産売買におけるVOCとシックハウス症候群の問題は、医学、建築、法律、生活実感が重なるため、単純な正解がありません。だからこそ、売主は情報整理、買主は生活条件の明確化、仲介会社は確認記録の徹底が欠かせません。新築やリフォーム済み物件でも、におい、換気、工事時期、資料の有無を冷静に確認することが大切です。見えない空気の問題を軽く見ないことが、結果として、安心できる住まい選びと無用なトラブル回避につながります。

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